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8/24|災害を「自分ごと」に。藤沢の防災・減災を考える|横山 ゆみひこ

8月24日
読了時間: 11分

【この記事のポイント】

・令和8年熊本地震からまもなく1か月。復旧・復興に向けた取り組みが続いています。

・8月23日には茨城県南部を震源とする地震が発生。千葉県では豪雨による大きな被害も発生しました。

・災害時には、道路、水道、医療、薬、避難所など「日常を支える仕組み」が本当に機能するかが問われます。

・藤沢市や神奈川県でも、道路陥没、道路冠水、津波、地震火災などへの対策が進められています。

・行政が計画や設備を整えるだけでなく、私たち自身が「自分の地域ならどうなるか」を考えることも、被害を小さくする第一歩だと思います。

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令和8年熊本地震が7月28日に発生してから、まもなく1か月になります。

現在も復旧・復興に向けて、多くの方々が尽力されています。

そして昨日、8月23日午前2時頃には、茨城県南部を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生し、関東各地で最大震度5弱を観測しました。

私自身も、夜中に緊急地震速報のアラームで飛び起きました。

その時、思い出したことがあります。


■ 私にとっての「災害」の原点

私が大学を卒業したのは、2011年。卒業式を間近に控えた3月11日。

都内の百貨店の地下で買い物をしていた時、大きな揺れに遭遇しました。

揺れが少し落ち着いた後、家電量販店のテレビで目にした光景は、今でも記憶に残っています。

東日本大震災の発生でした。


普段なら電車で15分ほどで帰れる自宅まで、その日は数時間かかったことを覚えています。

家に戻ると、多くの食器が割れていました。

その後、首都圏では計画停電が行われ、私の大学の卒業式も中止となりました。

そのまま社会人1年目を迎えることになりました。


私は中学・高校時代を静岡で過ごしました。

当時から「いつ大きな地震が起きてもおかしくない」と繰り返し聞いていましたが、恥ずかしながら、その頃の私は防災にほとんど関心がなく、実際に災害が起きた時の生活を具体的に想像することもできていませんでした。


その後、仕事を通じて福島や気仙沼などを何度も訪れる機会がありました。

震災から年月が経っても、被害の痕跡を伝える建物や場所があります。

さらに2024年の能登半島地震の被災地にも、何度か足を運びました。

避難経路が土砂で埋まっていた場所。

避難所となる建物自体が被害を受けていた場所。

現地を歩くと、災害というものが、私たちが「当たり前」だと思っている暮らしや風景を一瞬にして変えてしまうものだということを改めて感じます。


だからこそ、防災や減災は「詳しい人だけが考えること」ではなく、私自身を含め、一人ひとりが自分の暮らしに引き寄せて考える必要がある。

熊本地震、千葉県での豪雨、そして今回の茨城県南部を震源とする地震を受け、改めて防災・減災について考えてみたいと思い、この記事を書きました。


■ 大雨の降り方も変わっている

地震だけではありません。

近年は、短時間に猛烈な雨が降るケースも目立っています。

気象庁によれば、1時間80ミリ以上、3時間150ミリ以上、日降水量300ミリ以上といった強い大雨の発生頻度は、1980年頃と比べ、最近の10年間ではおおむね2倍程度に増加しています。

気象庁は、こうした変化には地球温暖化が影響している可能性があるとしています。

これまでの経験だけでは対応できない雨が降ることを、私たちも前提として考える必要が出てきています。


■ ① 防災設備は「あるか」ではなく「動くか」

8月13日からの千葉県の豪雨では、人的被害や住宅被害、道路冠水など大きな被害が発生しました。

その中で改めて注目されたのが、道路や鉄道などの下を通る「アンダーパス」です。

千葉市中央区の国道16号村田町アンダーパスでは冠水が発生しました。


国土交通省によると、この事案では非常用電源設備の不作動が冠水の原因と考えられています。

これを受けて国土交通省は、全国の直轄国道にある冠水のおそれのあるアンダーパスなど102か所を緊急点検。8月21日までに全箇所を点検し、3か所で異常が確認されました。


ここから考えなければならないのは、

「設備がある」ことと、「災害時に設備が本当に動く」ことは違う、ということではないでしょうか。

排水設備を整備する。

非常用電源を設置する。

センサーを設置する。

それだけではなく、停電した時に本当に作動するのか。

異常が起きた時、誰が確認するのか。

冠水する前に道路を閉鎖できるのか。

防災設備は「作って終わり」ではなく、日頃から機能を確認し続けることが重要です。


■ 神奈川・藤沢でも他人事ではない

神奈川県内にも、アンダーパスや過去に道路冠水が発生した低い土地など、「道路冠水注意箇所」が21市町・128か所あります。

また、神奈川県が管理する道路では、冠水のおそれのあるアンダーパスが17か所あり、県はすべての箇所に冠水を感知するセンサーを設置しています。

センサーが冠水を感知すると、進入部の表示板に通行止めを自動表示し、協定を結んだ地元の建設会社が現場へ向かい、道路を閉鎖する仕組みです。


道路の安全という点では、藤沢市にも興味深い取り組みがあります。

藤沢市では、空洞探査車で道路を走行し、レーダーによって路面の下に空洞がないかを調査しています。

さらに、東京大学生産技術研究所、ジオ・サーチ株式会社、藤沢市の産官学共同研究によって「藤沢市空洞ポテンシャルマップ」が開発されています。

これは市内を250メートル四方の1,198区画に分け、地質、下水道、地下水位などから「空洞が発生しやすい地域」を可視化したものです。

このマップを活用し、空洞が発生しやすいエリアを重点的に調査するなど、道路陥没を未然に防ぐ取り組みが進められています。

なお、このマップは「空洞の発生しやすさ」を示すもので、個々の道路の陥没危険度そのものを示すものではありません。

神奈川県では、県が管理する国道・県道の穴ぼこや側溝、柵、照明などの異常を、スマートフォンアプリ「My City Report」から知らせることもできます。

行政による点検だけでなく、道路を日常的に利用する人の「気づき」を、インフラ管理につなげる仕組みです。


■ ② 災害後の「暮らし」をどう守るか

災害時にもう一つ重要なのが、ライフラインです。

特に「水」。


水は飲むだけではありません。

食事、トイレ、手洗い、洗濯、入浴、医療、介護。

日常生活のあらゆる場面で水が必要です。

熊本地震でも断水が発生し、給水支援が行われました。


2024年の能登半島地震でも、水道の復旧には長い時間を要した地域があります。

さらに同年9月には奥能登豪雨が発生し、地震からの復旧途上に再び大きな被害を受けました。

いわゆる「複合災害」です。

能登では、水道管の本格復旧を待つだけではなく、地上に仮設の管を設置するなど、早期に水を届けるための工夫も行われました。


災害を完全に防ぐことはできません。

だからこそ、

「被害をどう防ぐか」と同時に、「被害が起きた後、どう早く暮らしを立て直すか」

という減災の視点も重要だと思います。


■ 「薬」を届けるモバイルファーマシー

災害時には、医療をどう維持するかも大きな課題です。

「モバイルファーマシー」をご存じでしょうか。

薬局機能を備えた車両で、大規模災害によって地域の薬局やライフラインが機能しにくくなった際、被災地で薬の調剤や供給などを支援します。


今回の熊本地震でもモバイルファーマシーが活動しました。

災害処方箋への対応や薬の相談だけでなく、地域の診療所や薬局の再開状況を確認し、被災した方々を再び地域の医療へつないでいく役割も担いました。

ここで大切なのは、

「支援を届けること」だけではなく、「地域の日常へどう戻していくか」という視点です。

これは神奈川県の災害医療を考えるうえでも、重要なテーマだと思います。


■ 海から医療を届ける「はくおうⅡ」

今回の熊本地震では、もう一つ新しい取り組みも行われました。

防衛省が借り上げている民間フェリー「はくおうⅡ」が八代港に入り、8月5日から被災者への入浴や休憩、医療などの支援を行いました。

船内では医療提供も行われました。


陸上の病院、道路、水道などが大きな被害を受けた場合、海から医療や生活支援を届ける。

海に面した神奈川県にとっても、こうした選択肢は研究する価値があるのではないでしょうか。


■ 避難できれば終わり、ではない

そして忘れてはいけないのが、避難生活です。

災害から逃れて避難所へ到着しても、そこで生活が始まります。


プライバシー。

暑さや寒さ。

トイレ。

睡眠。

食事。

感染症。

薬。

介護。

障がいのある方への支援。

乳幼児や子どもへの配慮。


災害時には、さまざまな課題が同時に発生します。

「命が助かったのだから我慢する」のではなく、避難生活の中でも一人ひとりの尊厳をどう守るのか。

これも防災政策の重要なテーマだと思います。


■ ③ 地域を歩かなければ分からない防災がある

藤沢市でも、さまざまな防災対策が進められています。

例えば、一定以上の揺れを感知すると電気を自動的に遮断し、地震後の電気火災を防ぐ「感震ブレーカー」の普及啓発。

海に近い地域では津波ハザードマップに加え、地域の皆さんが参加しながら避難経路などを確認する取り組みも進められています。

神奈川県も地域防災計画を策定し、地震だけでなく風水害、火山、雪害、道路災害など、さまざまな災害への対応を位置付けています。


国でも防災体制の見直しが進み、今年2026年7月には防災庁設置法が公布されました。

こうした取り組みが進むこと自体は、とても重要です。

ただ、

「組織を作った」「計画を作った」「会議を開いた」

だけで防災を終わらせてはいけないと思っています。


停電した時、本当に排水ポンプは動くのか。

避難所に行った時、薬を必要とする人に薬は届くのか。

断水した時、飲み水だけでなく、トイレや入浴に必要な水をどう確保するのか。

高齢の方、障がいのある方、子ども、外国人、ペットを連れた方など、それぞれの状況に応じて避難できるのか。

そして、自宅から避難場所まで、本当に歩いて行けるのか。

そこまで考えて初めて、防災計画が私たちの日常につながるのではないでしょうか。


■ 地域を歩いて気づいたこと

私自身、恥ずかしながら、地域を歩けば歩くほど防災への意識が高まってきました。

地図だけでは分からない坂道。

大雨の時に水が集まりそうな場所。

高齢の方が避難するには大変そうな道。

地域の方から聞かなければ分からない、過去の浸水や災害の経験。


こうしたことは、実際に地域を歩き、人の話を聞いて初めて見えてきます。

防災は行政だけで完成するものでも、住民だけでできるものでもありません。

行政、消防、医療・福祉、地域団体、事業者、そして地域に暮らす皆さん。

それぞれが持つ情報や経験をつなぐことが必要だと思います。


■ 今日、5分だけでも確認してみませんか

・自宅がどのような災害リスクのある場所なのか、ハザードマップを見る

・自宅から避難場所までの道を確認する

・家族が離れている時の連絡方法を決めておく

・水や食料、常用している薬などの備えを確認する

・自宅の感震ブレーカーや家具の転倒防止を確認する

・普段使う道路で危険な場所がないか、少し意識して歩いてみる


全部を一度にやる必要はないと思います。

一つ確認するだけでも、「自分ごと」にする第一歩になります。


■ 防災・減災を「自分ごと」に

2011年3月11日。

あの日まで、大きな地震を具体的に想像することができていませんでした。


それから15年。

福島、気仙沼、能登などを訪れ、そして今、藤沢の地域を歩く中で、防災について考える機会が増えました。

自然災害をなくすことはできません。

しかし、被害を少しでも小さくすることはできます。

被災した後の暮らしを、少しでも早く取り戻せる地域をつくることもできます。


大切な人。

大切な暮らし。

そして、大切な地域を守るために。

私自身も、防災・減災を「自分ごと」として学び続けたいと思います。

そして皆さんの声を聞き、実際に歩きながら、神奈川県や藤沢市で必要な取り組みを考え、提言していきます。

*写真は、石川県珠洲市にて撮影。


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【参考|地震・豪雨・気候変動】

■ 気象庁


【参考|令和8年熊本地震】

■ 熊本県

■ 日経メディカル

■ 読売新聞


【参考|道路冠水・インフラ対策】

■ 国土交通省

■ 神奈川県

■ 神奈川県

■ 藤沢市

■ 藤沢市


【参考|藤沢・神奈川の地域防災】

■ 藤沢市

■ 神奈川県


【参考|私自身の被災地訪問】

■ Yumihiko Yokoyama/ 横山弓彦 〝未来世代へのメモ〟


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