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9/22|食べることから考える、文化・歴史・くらし。そして生きること。|横山 ゆみひこ

9月22日
読了時間: 12分

【この記事のポイント】

・毎月19日は「食育の日」。教員時代、寮で生徒たちと食卓を囲んだ経験から、私自身も食育について学びました。

・食べ物は栄養だけでなく、その国や地域の文化、歴史、くらしとも深くつながっています。

・世界では6~23カ月の子どもの約70%がUNICEFのいう「子どもの食の貧困」の状態にあります。一方、日本の「相対的貧困率」とは異なる指標なので、分けて考える必要があります。

・こども食堂は「貧困家庭だけの場所」ではありません。食を通じて人と人がつながる、地域の多様な居場所として全国に広がっています。

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毎月19日は、「食育の日」。ご存じでしょうか。

そもそも、「食育って何?」という方もいらっしゃるかもしれません。

農林水産省は食育について、さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を身につけ、健全な食生活を実践できる人を育てるものと説明しています。


私がこの言葉に出会ったのは、教員になりたての頃。

勤めていたのは、寄宿舎(生徒寮)のある学校。私は舎監(勤務校では「寮教員」と呼んでいました)として、子どもたちと衣食住をともにしていました。

――とはいっても、部屋や入浴まで一緒という意味ではありません(笑)

朝食と夕食は一緒でした。

夕食の席では、「今日こんなことがあった」「最近、何が流行っているの?」など、生徒たちといろいろな話をしました。振り返ってみても、楽しい時間だったことを覚えています。

寮では、業者の方が献立に沿って食事を作ってくださっていました。その中で「食育」の時間を設けてくださることもあり、栄養バランスや、食べ物が身体の成長にどのような影響を与えるのかを、私自身も改めて学ぶ機会になりました。

ちなみに、2026年6月に決定された国の「第5次食育推進基本計画」では、新たな重点事項の一つとして「大人の食育」も掲げられています。

……とはいえ、食事の大切さは分かっていながら、高カロリー・味濃いめの食事についつい手が伸びてしまう私。

まさに「大人の食育」が必要なのかもしれません。


■食べ物から、世界の歴史が見えてくる

ここからが本題です。

食事は、その国や地域の文化、歴史、そして人々のくらしを映します。

皆さんも、好きな外国料理があるのではないでしょうか。


私は東南アジアの料理が好きです。理由は単純で、学生時代に何度も現地を訪れたからです。

なかでも、ベトナムの「バインミー」。

今では日本でもずいぶん身近になった、ベトナムのサンドイッチです。

私がバインミーの歴史を知ったきっかけは、大学4年生のときに所属していたゼミでした。

ゼミ仲間の一人が、バインミーがベトナムで生まれた背景や歴史、植民地時代のフランスから受けた影響について研究していました。

当の私は、フィリピンにおける政治と宗教をテーマに研究していました。

東南アジアをテーマとするゼミだったこともあり、「食」を入り口として歴史や社会について議論する機会が何度もありました。

楽しい一方で、植民地支配の歴史や、その影響によって現地に暮らす人々の生活や文化までもが変化していったことについて、考える機会にもなりました。


こうした経験があったからこそ、教員になってからは、独自のゼミの時間に「食から考える○○」というテーマを設け、生徒たちと一緒に考える時間をつくりました。

そのとき参考文献として使っていた一冊が、ビル・プライス著、井上廣美訳『図説 世界史を変えた50の食物』(原書房、2015年)です。

パン、トウモロコシ、麺、ジャガイモ、ハンバーガーなど、食べ物を切り口に世界の歴史をたどっていく一冊です。

少し前に出版された本ですが、ぜひお手に取ってお読みいただきたい一冊です。


■「食べる」ためのお金も、高くなった

では、いまの日本で「食べること」はどう見えているでしょうか。

先ほど、「高カロリー・味濃いめの食事についつい手が伸びる」と書きました。

某ファストフード店やコンビニに走ってしまうわけですが、最近は本当に、お昼ご飯を買うだけでも「高くなったなあ」と感じます。


例えば、マクドナルドのハンバーガー(単品)は現在190円から。

もちろん一つの商品だけで物価全体を語ることはできませんが、スーパーやコンビニで買い物をしていても、食べ物の値段がくらしに与える影響を実感する機会は増えました。

都内でも、「ワンコインランチ」はだいぶ減ったように感じます。これはあくまで私自身の実感ですが、キッチンカーを見ても、「ちょっと高いから、今日はコンビニで済ませようかな…」なんて考えることもあります。


総務省が2026年9月18日に公表した8月の消費者物価指数では、全国の総合指数は前年同月より1.9%上昇しました。

そして、この数年大きな話題になってきたのがお米です。

農林水産省が公表している全国約1,000店舗のスーパーのデータでは、9月7日から13日に販売された米5kgの平均価格は2,971円(税込)。5週連続で下落し、約2年ぶりに3,000円を下回りました。

値段が下がってきているという動きも、きちんと見ておきたいと思います。


一方、政府は9月15日、2027年4月1日から2年間、現在の軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%とする方針などを盛り込んだ大綱を閣議決定しました。

外食や酒類は軽減税率の対象ではありません。また、現時点では、この方針を実施するための法制上の措置に向けた段階です。

これから食料品価格そのものがどう動いていくのか。

税制を含め、私たちの食卓を取り巻く環境を引き続き見ていく必要があります。


■世界の子どもたちは、何を食べられているのか

そして、「食べること」を考えるとき、やはり子どもたちのことを考えたいと思います。

世界に目を向けると、「食の貧困」はいまも深刻です。


UNICEFが2026年4月に更新したデータでは、世界の6~23カ月の子どもの約70%が「子どもの食の貧困(Child Food Poverty)」の状態にあります。

さらに約30%、ほぼ3人に1人が「重度の食の貧困」にあります。

ここでいう「食の貧困」は、単純に「食べ物がまったくない」という意味だけではありません。

UNICEFとWHOは、乳幼児の食事の多様性を見るために、次の8つの食品群を用いています。


① 母乳

② 穀類・根菜・いも類

③ 豆類・ナッツ類・種子類

④ 乳製品

⑤ 肉・魚類

⑥ 卵

⑦ ビタミンAを多く含む果物・野菜

⑧ その他の果物・野菜


前日に、この8群のうち5群以上を食べていることが「最低限の食事多様性」の基準とされています。

世界の6~23カ月の子どもの69%が、この基準に届いていません。

さらに、56%が前日に卵・魚・肉などを食べておらず、40%が果物や野菜を食べていません。

また、「食料危機に関する2026年版最新報告書(Global Report on Food Crises 2026)」によれば、2025年には23カ国で3,500万人以上の子どもが急性栄養不良の状態にあり、そのうち1,000万人近くが、身長に比べて体重が著しく少ない「重度の消耗症」の状態にありました。


「食べられるか、食べられないか」だけではありません。

成長するために必要なものを、十分に、そして多様に食べられているのか。

そこまで含めて「食」を考える必要があるのだと思います。


■日本の子どもたちはどうでしょうか

では、日本ではどうか。

2025年の国民生活基礎調査によると、子どもの相対的貧困率は11.0%。およそ9人に1人です。

前回調査の11.5%からは0.5ポイント低下しました。

一方、子どもがいる現役世帯のうち、大人が1人の世帯では44.7%となっています。

ここで注意したいことがあります。

「相対的貧困率」とは、世帯の所得を世帯人数で調整した額が、社会全体の中央値の半分に届かない人の割合を示す指標です。

つまり、「子どもの11.0%が十分な食事をとれていない」という意味ではありません。


先ほど紹介したUNICEFの「子どもの食の貧困」とも、別の指標です。

では、日本で実際に「食べ物を買えない」という経験は、どのくらいあるのでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した「生活と支え合いに関する調査」では、過去1年間に、お金が足りなくて家族が必要とする食料を買えなかった経験のある世帯は11.1%でした。

前回調査の13.6%からは減少しています。

また、ひとり親世帯では20.8%でした。

もちろん、これは2022年時点の調査であり、子どものいる家庭だけを対象にした数字でもありません。

その限界には注意が必要です。

それでも、「食べ物を十分に買えるか」という問題が、日本のくらしから遠く離れた話ではないことが分かります。


食べ物の値段が上がれば、家計に占める食費の負担も変わります。

「今日は何を食べようか」と選べること。

成長期の子どもたちが、必要な食事を安心してとれること。

それは決して当たり前のことではありません。


■こども食堂は「貧困家庭のためだけの場所」ではない

子どもの成長を支え、見守る場所は、学校だけではありません。

学童、習い事、地域の活動、そして、こども食堂。


「こども食堂」という言葉から、「経済的に困っている家庭の子どもが行く場所」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。けれど、こども食堂のあり方は実にさまざまです。

食事を一緒にする場所であり、地域の人と出会う場所であり、遊んだり、学んだりできる場所でもあります。

子どもだけでなく、地域のさまざまな世代の人が集まる場所もあります。

家でも学校でもない、地域の中の身近な「居場所」。

食をきっかけに人と人がつながることも、こども食堂が持つ大切な役割の一つです。


全国こども食堂支援センター・むすびえの全国調査では、こども食堂の66.9%が「参加条件はない」と回答しています。

所得による参加制限を設けているこども食堂は5.6%でした。

この数字からも、こども食堂を「貧困家庭だけの場所」と捉えることは、現在の実態とは異なることが分かります。

一方で、食べることや生活そのものに困りごとを抱える家庭があり、こども食堂がそうした人たちと地域や支援をつなぐ接点になる場合があることも、大切な役割の一つだと思います。


むすびえの2025年度調査では、全国のこども食堂は12,602カ所。

2018年度の2,286カ所から大きく増え、公立小学校・義務教育学校の数の約7割にあたる規模になっています。

神奈川県でも、県が把握したこども食堂は、令和4年度の416カ所から令和7年度には678カ所へ増えています。

広がる一方で、活動を続けていくための課題もあります。

むすびえの「こども食堂の実態・困りごと調査2025」では、運営上の困りごととして、

「運営資金不足」47.2%

「必要な人に支援を届けるための周知・広報」47.2%

「運営スタッフ・ボランティア不足」42.2%

「食材・物品の不足」32.0%

などが挙げられています。


神奈川県では、スーパーで廃棄予定となった野菜を近隣のこども食堂へ直接提供する取り組みなども行われています。

そして、私が暮らす藤沢市でも、市が「子ども食堂リスト」や「子ども食堂マップ」を公開しています。

2023年には、市内のこども食堂・地域食堂が情報交換などを行う「ふじさわこども食堂・地域食堂ネットワーク」が発足し、市や藤沢市社会福祉協議会とも連携しています。

2026年3月には、市役所でこども食堂などの運営に関する研修会も開催されました。


こども食堂の数が増えることだけが目的ではありません。

食べることを支える環境をつくること。

地域の中に、安心して立ち寄れる場所があること。

そして何より、子どもたち自身がそうした場所に行きやすい環境であること。

そうしたことも一緒に考えていく必要があるのだと思います。


■食べることは、生きること

夏休みが明けて、まもなく1カ月。

お休みの間、「今日のお昼はどうしよう」と、毎日の食事の準備に頭を悩ませたご家庭もあったのではないでしょうか。

学校が始まれば、給食があります。

藤沢市では、国からの財政支援を受け、2026年度は小学校と特別支援学校小学部の給食費が無償化されています。

これは家計を支える一つの仕組みです。


でも、食について考えることは、給食があるかないかだけの問題ではありません。

何を食べるのか。

誰と食べるのか。

どこで食べるのか。

そして、その食べ物がどこから来て、どんな歴史や文化とつながっているのか。


教員になりたての頃、生徒たちと食卓を囲んで知った「食育」という言葉。

大学時代には、食から植民地支配や世界史を考えました。

そしていま改めて、物価、子どもの成長、地域の居場所という視点から「食べること」を考えています。


食べることは、身体をつくること。

文化を知ること。

人とつながること。

そして、生きることです。

食べられることを当たり前だと思わず、誰もが食への不安を抱えずに暮らせる地域とはどんな地域なのか。

これからも、さまざまな方の声を聞きながら、考え続けていきたいと思います。


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【主な参考資料】

■ 食育

※「毎月19日は食育の日」、食育の説明


■ 食文化・参考文献

国立国会図書館「図説世界史を変えた50の食物」 ビル・プライス著、井上廣美訳、原書房、2015年


■ 食品価格・物価

※2026年8月分:総合指数は前年同月比1.9%上昇

※スーパーでの米の販売数量・価格の推移を掲載


■ 飲食料品の消費税

※2026年9月15日閣議決定の大綱等を掲載


■ 世界の子どもの食・栄養

※乳幼児のChild Food Poverty、食事の多様性に関するデータ

※6~23カ月児の8食品群、最低食事多様性の定義

※Global Report on Food Crises 2026


■ 日本の貧困・食料購入困難

国立社会保障・人口問題研究所「2022年 生活と支え合いに関する調査」

※必要な食料が買えなかった経験のある世帯11.1%、ひとり親世帯20.8%


■ こども食堂・全国

※2025年度全国12,602カ所

※第2回全国こども食堂実態調査

 「参加条件なし」66.9%、「所得による制限あり」5.6%

※「こども食堂の実態・困りごと調査2025」


■ 神奈川県のこども食堂

※令和7年度:県内678カ所

※スーパーマーケットから子ども食堂への野菜の直接提供等


■ 藤沢市

※市内子ども食堂リスト・マップ等

※令和8年度、小学校・特別支援学校小学部の給食費無償化


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